自転車保険の加入を義務付ける自治体が増加しているものの、いまだ加入義務や自転車保険の概要について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は「自転車保険加入義務とは?」「どのような自転車保険に加入すればいいの?」など、多くの人が抱える疑問について詳しく解説します!
どうして義務化が進んでいるの?
2015年に兵庫県で自転車保険の加入が義務付けられて以来、自転車保険の加入義務を課す自治体が年々増加しています。以下の資料をみてみましょう。
自転車保険加入義務及び加入努力義務を課す自治体数
※保険比較の方程式調べ
義務および努力義務を課す自治体が2019年では10自治体を越していていますね。
なぜこんなにも加入を義務付ける自治体が増加しているのでしょうか?
高額な賠償金を請求された事例があるから
自転車保険の加入を義務付ける自治体増加の背景には、近年の自転車での交通事故による高額な賠償請求の発生があります。
以下にまとめた自転車事故の高額賠償事例をみてみましょう。
参照:https://style.nikkei.com
このように、自転車事故は相手に障害が残るような重大なケガを負わせたり、死亡させたりすることがあると分かります。
また、2013年の事故では約9,500万円の賠償請求、2008年の事故では約9,300万円の賠償請求が発生しており、どちらも未成年者による事故なので、その保護者である親が1億円近くを賠償することになりました。
このような近年の自転車事故から、
上記3つの重大なリスクが改めて認識され始めたのです。
被害者と加害者の両方を守ることが目的
上述の通り、被害者はもちろん加害者にも甚大な影響を与える自転車事故。
自転車保険の加入義務化は、被害者と加害者の両方を救済するための措置です。
では、被害者と加害者の救済について掘り下げてみましょう。
被害者側の救済
加害者の資産が賠償金を下回った場合、被害者は十分な補償を受けられない可能性があります。
しかし、自転車保険に加入していれば保険会社が賠償金を補償してくれます。
加害者側の救済
自転車事故が起きたとき、加害者が自転車事故に加入していなかった場合は多額の賠償金を全額支払わなければならなくなります。
しかし、自転車保険に加入していれば補償が受けられるため、経済的な負担を軽減することができます。
義務の対象者はその自治体を自転車で走行する人
ここまで自転車保険の義務化の背景や目的について解説してきました。続いて、義務の対象者や義務化されている自治体について解説していきます!
自転車保険の加入が義務付けられるのは、原則的に対象地区を自転車で走行する人全員です。
注意すべき点は、
以上の3点です。
加入義務化自治体を一覧表で確認!
それでは、どの自治体が自転車保険等への加入を義務付けているのかを一覧表で確認してみましょう!
義務 / 努力義務地域一覧 | ||
---|---|---|
北海道・東北 | 北海道 | 努力義務 |
宮城県 | 仙台市:義務 | |
関東 | 栃木県 | 栃木市:努力義務 |
茨城県 | つくば市:努力義務 笠間市:義務 |
|
群馬県 | 努力義務 | |
千葉県 | 努力義務 | |
埼玉県 | 県全体:義務 | |
東京都 | 都全体:努力義務 豊島区:義務 |
|
神奈川 | 県全体:義務 | |
中部・北陸 | 石川県 | 金沢市:義務 |
長野県 | 県全体:義務 | |
静岡県 | 県全体:義務 | |
愛知県 | 名古屋市:義務 豊橋市:義務 豊川市:努力義務 知多市:努力義務 |
|
近畿 | 滋賀県 | 義務 |
京都府 | 義務 | |
大阪府 | 義務 | |
兵庫県 | 義務 | |
中国・四国 | 鳥取県 | 努力義務 |
香川県 | 努力義務 | |
徳島県 | 努力義務 | |
愛媛県 | 努力義務 | |
高知県 | 努力義務 | |
九州・沖縄 | 福岡県 | 努力義務 |
熊本県 | 努力義務 | |
鹿児島県 | 義務 |
家族が自転車を利用する場合は、自分だけでなく家族全員の走行ルートも確認しておきましょう。
義務と努力義務の違いは?
自治体によっては、自転車保険等の加入は「義務」であったり「努力義務」であったりします。これらの違いは何なのでしょうか?
義務と努力義務には、
上記のような違いがあります。
つまり加入義務と加入努力義務は、
上記のように説明できます。
どのような保険等に加入すればいいの?
自転車保険等の加入が義務付けられている自治体を自転車で走行する場合は、自転車保険等に加入しなければなりません。
また、加入努力義務が課せられている自治体を走行する場合は、加入するように努める必要があります。
それでは、一体どのような保険等に加入すればいいのでしょうか?
自転車保険等は、大きく「賠償責任補償」と「傷害補償」の2つから構成されています。この2つの補償は、
上記のように説明できます。
自転車保険への加入を検討している人のなかには「自転車保険」という名称が付いた保険に加入しなければならないと勘違いしている人もいるでしょう。
しかし、実際は必ずしも「自転車保険」という名称である必要はなく、損害賠償責任補償があればOKです。
つまり、加入しなければならないのは「自転車保険」という名称の保険ではなく、「自転車の利用によって他人の生命又は身体を害した場合における損害を補填するための保険又は共済」ということになります。
このように、自転車保険という名称でなくとも賠償責任補償を付けることができる保険はたくさん存在します。今回は埼玉県を例に挙げ、対象となる自転車保険をまとめたのでチェックしてみましょう。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0311/jitensya/jitensyajyourei.htmlより引用
「自転車向け保険」や「自動車保険の特約」の他に、「火災保険の特約」や「傷害保険の特約」も加入義務の対象となっていることが分かりますね!
対象の保険に加入しているか分からない…
ここまで読み進めてみても「正直、よく分からない…」「対象になる保険に加入しているのか、そうでないかが不明…」という人も多いのではないでしょうか?
確かに「損害賠償責任補償があれば大丈夫」「自転車保険でなくとも、対象になる保険に加入していれば大丈夫」と言われても、何だか分かりにくい気もしますよね…。
そんな人のために、自身の保険の加入状況を把握しやすい「保険加入チェックシート」を用意しました。ぜひチェックシートを参考に、保険加入状況を確認してみましょう!
※TSマークには期限があります、今回は期限内であることが前提です。必ず期限を確認しましょう。
※今回は埼玉県の加入状況チェック表を参照して作成
いかがですか?
もし「保険会社に確認しましょう」or「自転車保険へ加入しましょう」であった場合は、早急に確認or加入しましょう。
今のところ未加入でも罰則はない
ここで気になるのが、未加入の場合や違反した場合の罰則ですよね。
もしかしたら自転車保険等の加入が義務付けられている自治体を走行しているのにもかかわらず、自転車保険等に加入していないため焦っている人もいるかもしれません!
じつは、今のところ自転車保険等の加入が義務付けられている自治体において、罰則が規定されている自治体はありません(2019年6月現在)。
その主な理由は、保険等に加入しているかどうかの確認が難しいからです。
加入義務の対象となるような保険等は、多岐に渡ります。
自動車保険や火災保険のオプションとして加入している場合もあれば、自分自身で加入していなくても親や配偶者が「家族プラン」に加入している場合もあるので、それぞれの保険加入を証明することは非常に困難なのです。
ここで「罰則がないのであれば、わざわざ加入しなくてもいいのでは?」と思った人もいるかもしれません。では、本当に加入しなくても問題はないのでしょうか?
保険未加入は条例違反!
自転車保険等の加入が義務付けられている自治体の条例には、加入義務についてしっかり記述されています。そのため、罰則はなくとも未加入であれば条例違反になります。
また、自治体によっては学校や会社に生徒、従業員などが保険に加入しているかを確認するようにしている自治体もあります。
そのため、場合によっては自転車通学や通勤ができない可能性も出てくるでしょう。
事故が起きたら大損害
そもそも自転車保険とは、被害者と加害者の両方を守るためのものです。そのため保険未加入の状態で事故が起きた場合、被害者・加害者問わず大きな損害を被ることになります。
保険未加入の状態で事故が起きた場合を想像してみましょう。被害者になってしまったら、必要な治療費や賠償金を受け取れないかもしれません…。
加害者になってしまったら、1億円近い賠償金を支払うことになるかもしれません…。
このように、罰則の有無がどうでもよくなるような非常に大きな損害が生じる可能性があるので、自転車保険には必ず加入しましょう!
まとめ
自転車保険等の加入義務について解説しました。
改めて、自転車保険等の加入義務についてまとめておきましょう。
加入が義務付けられているのは賠償責任補償なので、必ずしも「自転車保険」に加入する必要はない(賠償責任補償が付いているものであればOK)。
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