埼玉県は自転車事故の被害者の救済と、加害者の経済的負担の軽減を図るため「埼玉県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を改正しました。それに伴って自転車損害賠償保険等への加入が義務化されたものの、イマイチ理解できていない人も多いようです。
そこで今回は、どのような人が義務の対象なのか詳しく解説します!
平成30年4月1日、埼玉県では自転者利用者の交通ルールの徹底とマナーの向上を図るとともに、交通事故が起こった場合の被害者の救済と加害者の経済的負担の軽減を図るため「埼玉県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が改正されました。この条例では、自転車事故を起こした際の賠償責任を補償する保険である自転車損害賠償保険等への加入が義務付けられています。
しかし、どのような人に加入義務があるのか、埼玉県に住んでいない人は義務の対象になるのかなど、よく分かっていない人も多いようです。
ここからは、どのような人に自転車損害賠償保険等への加入の義務があるのか具体例でご紹介します。埼玉県に住んでいる人だけでなく、埼玉県に通勤・通学している人も参考にしてくださいね!
自転車で埼玉県を走行する人は義務の対象!
埼玉県が平成30年4月1日に改正した「埼玉県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では、自転車損害賠償保険等への加入が義務付けられています。その義務の対象者は、基本的には「自転車で埼玉県を走行するか」で決まります。
そのため埼玉県在住かどうかは関係なく、他府県に住んでいても自転車で埼玉県を走行する場合は義務の対象になります。
しかし、自転車で埼玉を走行する人だけが義務の対象になるわけではありません。対象になるのは、
- 自転車利用者(未成年者及び業務のために自転車を利用する者を除く)
- 保護者
- 事業者
- 自転車貸付業者
- 自転車小売業者
についてです。
対象者 | 義務 / 努力義務 |
---|---|
自転車利用者 | ◯ |
保護者 | ◯ |
事業者 | ◯ |
貸付業者 | ◯ |
小売業者 | △ |
※◯:義務 △:努力義務
※表は横にスクロールできます。
義務の内容をチェックしましょう!
自転車利用者の加入義務について
自転車に乗る人は、自分が被保険者となる自転車損害賠償保険等に加入する義務があります。ただし、未成年者は 自転車利用者には入らないので、義務の対象外となります。また、業務でのみ利用する人も原則対象外になります。(個人の自転車等で事業に利用する場合は、対象になる場合もあります。)
以下に自転車利用者の加入義務についての条例を抜粋したので、チェックしてみましょう!
自転車利用者(未成年者を除く。)は、その自転車の利用に係る自転車損害保険等(自転車の利用によって他人の生命又は身体を害した場合における損害を塡補するための保険又は共済をいう。以下この条及び次条において同じ。)に加入しなければならない。ただし、当該自転車利用者以外の者が当該自転車の利用に係る自転車損害保険等に加入しているときは、この限りでない。
(第十一条第1項)
未成年者の場合は保護者に加入義務がある
先ほど、未成年者は自転車利用者には含まれないと説明しました。その理由は、未成年者に代わって保護者が自転車保険に加入する義務を負うためです。
保護者は、その監護する未成年者の自転車の利用に係る自転車損害保険等に加入しなければならない。ただし、当該保護者以外の者が当該自転車の利用に係る自転車損害保険等
に加入しているときは、この限りでない。
(第十一条第2項)
事業者・貸付け業者は加入義務がある
事業者と貸付け業者にも加入義務があります。もし自転車をレンタルする機会があれば、念のため保険に入っているか確認しておくと安心ですね。
○事業者
従業員が業務の中で自転車を利用する場合は、従業員が被保険者となるような賠償責任保険などに加入しなければなりません。これは、保険によっては勤務中の事故が補償対象外となる場合があるためです。
事業者が加入義務を負っているため、業務でのみ自転車を利用する人に加入義務はありません。
○貸付け業者
自転車をレンタルする業者は、保険に加入しなければなりません。
事業者は、その事業の用に供する自転車の利用に係る自転車損害保険等に加入しなければならない。ただし、当該事業者以外の者が当該自転車の利用に係る自転車損害保険等に加入しているときは、この限りでない。
(第十一条第3項)
自転車の貸付けを業とする者は、その貸付けの用に供する自転車の利用に係る自転車損害保険等に加入しなければならない。ただし、当該自転車の貸付けを業とする者以外の者が当該自転車の利用に係る自転車損害保険等に加入しているときは、この限りでない。(第十一条第4項)
小売業者は自転車保険加入を確認する努力義務がある
自転車を販売するときは、購入者に対して自転車損害保険等の加入の有無について、口頭などによって確認する努力をする必要があります。保険加入の有無を確認した結果「わからない」「加入していない」との回答を受けた場合は、保険の必要性や保険加入の義務化等の情報を提供してください。
埼玉県では保険への加入の必要性を示したチラシもあるので、ぜひ活用しましょう。
自転車の小売を業とする者は、自転車を販売するときは、自転車の購入者に対し、自転車損害保険等への加入の有無を確認するよう努めなければならない。この場合において、自転車の小売を業とする者は、自転車損害保険等に加入していることを確認することができなかったときは、当該自転車の購入者に対し、自転車損害保険等に関する情報を提供するよう努めなければならない。
(第十二条第1項)

未加入の場合はどうなる?違反したら罰則はあるの?
ここで気になるのが、未加入の場合はどうなるのか…違反したら罰則はあるのか…ということですよね。もしかしたら今日まで加入義務の対象になっていることに気付かず、今になって焦っている人もいるかもしれません。
埼玉県では自転車保険への加入が義務化されましたが、今のところ罰則は設けられていません(2019年5月現在)。その主な理由は、保険に加入しているかどうかの確認が難しいからです。加入義務の対象となるような補償は、自動車保険や火災保険のオプションとして加入している場合もあり、自分自身で加入していなくても親や配偶者が「家族プラン」に加入している場合もあるので、それぞれの保険加入を証明することは非常に困難なのです。なお、これは埼玉県に限らず、すでに義務化している府県についても罰則規定はありません。
しかし、罰則がないからといって加入しなくていいという訳ではありません。万が一の高額な賠償金や、被害者の治療費をまかなうためにも自転車保険には加入しておくべきです。
義務の対象になるか具体例で確認!
埼玉県の自転車損害賠償保険等への加入の義務対象者や内容について解説しました。続いて、具体例を用いてもう少し詳しくみていきましょう。
- 埼玉県在住ではないものの、来年度から子どもが埼玉県内の高校に自転車で通う
- 自転車で大宮市内の大学に通う
- 業務の中で自転車を利用する
- 勤務先が浦和市にあり、来月から健康のために自転車通勤を考えている
- 春日部に旅行に行き、自転車をレンタルした
保護者に義務がある
埼玉県を自転車で走行すると義務の対象になりますが、ほとんどの高校生は未成年者であるため“自転車利用者”には含まれず、代わりにその保護者に義務が生じます。そのため、保護者は子どもが被保険者となるような損害賠償保険などに加入しなければなりません。
→年齢によって義務の対象が異なる
未成年者の場合は保護者に義務がありますが、成年者であれば自分に義務が生じます。成年者の場合は“自転車利用者”に含まれるため、自分が被保険者となるような損害賠償保険に加入しなければなりません。
→勤務している会社に加入義務がある
業務で自転車を利用する人は“自転車利用者”に含まれないため、自分に加入義務はありません。ただし、自前の自転車を利用している場合は対象となることもあります。
→自分に義務がある
浦和市は埼玉県にあるので、条例の対象になります。
→場合による
貸付け業者は保険への加入を義務付けられているため、自転車利用者は第十一条第1項のただし書き以降を満たします(他の人によって加入している状態)。よって、自転車利用者に加入義務はありません。ただし、貸付け業者が条例を違反しており保険に未加入の場合は、第十一条第1項のただし書きの部分に該当しないため加入義務が発生します。
まとめ
平成30年4月1日に改正された「埼玉県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の自転車損害賠償保険等への加入の義務対象者について解説しました。
埼玉県では、平成24年4月1日に「埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例」を施行し、保険加入の促進に取組んできました。しかし、埼玉県で実施したアンケート調査では、自転車保険の加入率は約45%と半数以下の状態でした。
そうした状況を踏まえ、被害者救済の確保等の観点から自転車利用者に対する保険加入が義務化されることになったのです。未加入でも罰則は設けられてはいませんが、義務の対象になっている場合は自分が被害者になった時、あるいは加害者になった時を想定して必ず加入しておきましょう!
埼玉県の義務化対象市区町村
義務化対象となる市区町村は以下を参考にして下さい。
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