神奈川県で施行された「神奈川県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の背景には、過去の悲しい自転車事故があります。
もしもの事態が起きてしまった時に対処できるように、令和元年10月1日から自転車損害賠償責任保険等への加入が義務付けられることになりました。
そこで今回は、どのような人が義務の対象なのか詳しく解説します!
目次
平成31年4月1日、神奈川県では「神奈川県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が施行されました。
それに伴って、令和元年10月1日より自転車事故を起こした場合の賠償責任を補償する保険である自転車損害賠償責任保険等への加入が義務付けられることになりました。

しかし、どのような人に加入義務があるのか、未加入の場合は罰則が設けられているのかなど、詳しい内容についてまだ理解できていない人も多いようです。
ここからは、どのような人に自転車損害賠償責任保険等への加入の義務があるのか具体例でご紹介します。
神奈川県に住んでいる人だけでなく、神奈川県に通勤・通学している人も参考にしてくださいね!
自転車で神奈川県を走行する人は義務の対象!
神奈川県が平成31年4月1日に施行した「神奈川県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では、令和元年10月1日から自転車損害賠償責任保険等への加入が義務付けられることになりました。
その義務の対象者は、基本的には「自転車で神奈川県を走行するか」で決まります。
そのため神奈川県在住かどうかは関係なく、他府県に住んでいても自転車で神奈川県を走行する場合は義務の対象になります。
しかし、自転車で神奈川県を走行する人だけが義務の対象になるわけではありません。
対象になるのは、
- 自転車利用者
- 保護者
- 事業者
- 自転車貸付け業者
- 自転車小売業者
対象者 | 義務 / 努力義務 |
---|---|
自転車利用者 | ◯ |
保護者 | ◯ |
事業者 | ◯ |
貸付け業者 | ◯ |
小売業者 | ◯ and △ |
※◯:義務 △:努力義務
義務の内容をチェックしましょう!
自転車利用者の加入義務について
自転車に乗る人は、自分が被保険者となる自転車損害賠償責任保険等に加入する義務があります。
ただし、他の人(保護者、事業者、レンタル業者など)が加入している場合は義務の対象にはなりません。
以下に自転車利用者の加入義務についての条例を抜粋したので、チェックしてみましょう!
自転車利用者は、その利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しなければならない。
ただし、当該自転車利用者以外の者が、当該利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しているときは、この限りでない。(第16条第1項)
未成年者の場合は保護者に加入義務がある
未成年者は自分で保険に加入することはできないので、保護者が代わりに自転車保険に加入する義務を負います。
保護者は、その監護する未成年者の自転車の利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しなければならない。ただし、当該保護者以外の者が、当該利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しているときは、この限りでない。(第16条第2項)
事業者・貸付け業者は加入義務がある
事業者と貸付け業者にも加入義務があります。もし自転車をレンタルする機会があれば、念のため保険に入っているか確認しておくと安心ですね。
○事業者
従業員が業務の中で自転車を利用する場合は、従業員が被保険者となるような賠償責任保険などに加入しなければなりません。
これは、保険によっては勤務中の事故が補償対象外となる場合があるためです。
○貸付け業者
自転車をレンタルする業者は、保険に加入しなければなりません。
事業者は、その事業活動の用に供する自転車の利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しなければならない。ただし、次項の規定により、自転車貸付け業者が、当該利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しているときは、この限りでない。
(第16条第3項)
自転車貸付け業者は、その貸付けの用に供する自転車の利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しなければならない。(第16条第4項)
小売業者は自転車保険加入を確認する義務がある
自転車を販売、整備、修理するときは、購入者に対して自転車損害責任保険等の加入の有無について確認しなければなりません。
そのうえで加入していないことが分かったら、自転車を買おうとしている人に自転車保険などの情報を提供する努力をしなければなりません。
自転車小売等業者は、自転車を小売し、整備し、又は修理するときは、客に対し、当該自転車の利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入しているかどうかを確認しなければならない。
この場合において、客が当該利用に係る自転車損害賠償責任保険等に加入していることを確認できないときは、自転車小売等業者は、当該客に対し、自転車損害賠償責任保険等への加入に関する情報の提供を行わなければならない。(第17条第1項)
前項後段に規定する場合において、自転車小売等業者は、当該客に対し、自転車損害賠償責任保険等への加入を勧めるよう努めなければならない。
(第17条第2項)

未加入の場合はどうなる?違反したら罰則はあるの?
ここで気になるのが、未加入の場合はどうなるのか…違反したら罰則はあるのか…ということですよね。
もしかしたら今日まで加入義務の対象になっていることに気付かず、今になって焦っている人もいるかもしれません。
神奈川県では自転車保険への加入が義務化されることになっていますが、今のところ罰則は設けられていません(2019年5月現在)。
その主な理由は、保険に加入しているかどうかの確認が難しいからです。
加入義務の対象となるような補償は、自動車保険や火災保険のオプションとして加入している場合があります。
自分自身で加入していなくても親や配偶者が「家族プラン」に加入している場合もあるので、それぞれの保険加入を証明することは非常に困難なのです。
なお、これは神奈川県に限らず、すでに義務化している府県についても罰則規定はありません。
未加入の状態で事故を起こしたら?
自転車保険の加入義務に現在罰則はないと書きましたが、事故を実際に起こした場合に不利にならないとは限りません。
保険加入が義務化されているにも関わらず、条例を違反した状態で事故にあった場合、裁判等で不利になる可能性もあります。
自身のケガの補償を重視しないのであれば、月々100円から損害賠償補償のついた自転車保険に加入できます。
ほとんどの自転車保険は、自転車事故だけでなく日常の事故の補償もしてくれるので、特に義務化が始まっている地域の人は早めに加入を検討しましょう。
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義務の対象になるか具体例で確認!
神奈川県の自転車損害賠償責任保険等への加入の義務対象者や内容について解説しました。
続いて、具体例を用いてもう少し詳しくみていきましょう。
- 神奈川県在住ではないものの、来年度から子どもが神奈川県内の高校に自転車で通う
- 自転車で相模原市の大学に通う
- 業務の中で自転車を利用する
- 勤務先が横浜市にあり、来月から健康のために自転車通勤を考えている
- 鎌倉に旅行に行き、自転車をレンタルした
→保護者に義務がある
神奈川県を自転車で走行すると義務の対象になりますが、ほとんどの高校生は未成年者であるため、代わりにその保護者に義務が生じます。
そのため、保護者は子どもが被保険者となるような損害賠償保険などに加入しなければなりません。
→年齢によって義務の対象が異なる
未成年者の場合は保護者に義務がありますが、成年者であれば自分に義務が生じます。成年者の場合は、自分が被保険者となるような損害賠償保険に加入しなければなりません。
→勤務している会社に加入義務がある
業務の中で自転車を利用する場合は、事業者に加入義務があるので従業員が個々に加入する必要はありません。
ただし、通勤など業務外で自転車を利用する人は義務の対象となります。
→自分に義務がある
横浜市は神奈川県にあるので、条例の対象になります。
→義務はない
貸付け業者は保険への加入を義務付けられているため、自転車利用者は第十一条第1項のただし書き以降を満たします(他の人によって加入している状態)。
よって、自転車利用者に加入義務はありません。
東京で自転車を使う場合は?
神奈川県民が他県で自転車を使う場合、自転車保険が必要かどうかはその自治体の条例によります。
東京都では2020年4月から自転車保険の加入が義務化されますので、神奈川県民でも東京で自転車に乗る場合は自転車保険が必要になります。
ただし、東京でレンタサイクルなどを使う場合は、貸付業者に加入義務が課されているので利用者は特に何もする必要はありません。
東京都の自転車保険義務化について、詳しくは下のコラムをご覧ください。
【東京都の自転車保険義務化】罰則や背景は?条例施行はいつから?
まとめ
今回は「神奈川県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の自転車損害賠償責任保険等への加入の義務化対象者について解説しました。
神奈川県では過去に自転車による悲しい交通事故が起きており、未成年者に高額な賠償責任を命じられたこともあります。
令和元年10月1日から義務付けられた自転車損害賠償責任保険等への加入は、自分が被害者になった時、あるいは加害者になった時にあなたと家族を守ってくれるはずです。
今のところ未加入でも罰則は設けられてはいませんが、もしもの事態に備えて自転車保険による安心を確保しておきましょう!
神奈川県の義務化対象市区町村
義務化対象となる市区町村は以下を参考にして下さい。
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