皆さんはTSマークをご存知ですか?
TSマークは、自転車安全整備士が点検確認した自転車に対して貼付されるものであり、より安全に自転車に乗って貰うためのマークでもあります。
それ以外にもこのマークには、自転車向けの保険が付いてくるのですが、実はこの保険が要注意だったりするんです!
え?保険なのに要注意なの?
そう思った方に、今回はTSマーク付帯の自転車保険について詳しく解説していきたいと思います。
目次
TSマークとは?
TSマークは点検・整備の証

皆さんの自転車に青色または、赤色のシールが貼られていませんか。
このシールは『TSマーク』と言って、自転車安全整備店に勤務している自転車安全整備士が、点検・整備をした安全な自転車ですよと印したシールのことを指します。
このTSマークを貼る際の料金は、自転車の点検・整備を受ける店舗ごとによって料金が異なります。
あくまで点検・整備をした証に貰えるものなので、点検・整備を受けずにTSマークを付けることはできません。
TSマークは自転車安全整備店で点検・整備を受ければ、購入店以外でも貰うことができます。
もしもTSマークを付けたい場合は、お近くの自転車安全整備店に問い合わせてみてください。

⇧このマークが目印です!!
![]() TSマークの“TS”とは『TRAFFIC SAFETY』の略であり、その頭文字を取ったもの。日本語で交通安全という意味です。 |
TSマークには付帯保険が付いてくる
自転車の点検・整備(有料)を受けてTSマークを貼って貰うと、傷害保険と賠償責任保険、被害者見舞金(赤色マークのみ)がセットで付帯されます。
つまり点検・整備のおまけとして自転車保険がついてくるのです!
なお、TSマークには第一の青色TSマークと第二種のTSマークがあり、それぞれ補償内容が異なります。
※表は横にスクロールできます。
第一種TSマーク(青色マーク)
![]() |
第二種TSマーク(赤色マーク)
![]() |
||
傷害保険 | 入院15日以上:(一律)1万円 | 傷害保険 | 入院15日以上:(一律)10万円 |
死亡・重度後遺障害(1~4級):(一律)30万円 | 死亡・重度後遺障害(1~4級):(一律)100万円 | ||
損害賠償保険 | 死亡・重度後遺障害(1~7級): (限度額)1,000万円 |
損害賠償保険 | 死亡・重度後遺障害(1~7級): (限度額)1億円 |
被害者見舞金 | ー | 被害者見舞金 | 入院15日以上:(一律)10万円 |
一般的に自転車保険は被保険者をあらかじめ指定して加入します。
しかし、この保険は点検・整備を受けた自転車(のTSマーク)に付帯されます。
よって、自転車に乗っている人なら誰でも補償の対象となります。
TSマークの付帯保険は認知されていない?
TSマークを見たことがある人は多くいるかも知れませんが、実際TSマークに付帯する保険のことを、どれくらいの人が知っているのでしょうか。
今回、自転車保険の方程式が約500人に独自アンケートを実施。その結果、TSマーク自体を知っている人が51%、知らなかった人が49%でした。

※自転車比較の方程式調べ 詳しくは①TSマーク加入率実態調査概要参照(499人にアンケート)
また、TSマークを過去に加入していたことがある・現在加入していると答えた人は約45%でした。
全体の45%に加入経験があり、TSマークの存在を知っている人は全体の51%という結果です。

※自転車比較の方程式調べ 詳しくは①TSマーク加入率実態調査概要参照(499人にアンケート)
このアンケート結果から、約半数の人はTSマークの存在を知っており、TSマークに加入したことがない人は、ほとんどTSマークのことを知らないということが分かります。
【付帯保険の認知度】
では、TSマークの付帯保険についての認知度はどうでしょうか。
TSマークに加入している106人の中で、自転車事故に対応する付帯保険が付いていることを知っていた人は約半数の56%でした。

※自転車比較の方程式調べ 詳しくは②TSマーク認知度実態調査概要参照(106人にアンケート)
TSマーク加入者のうち、半数近くはTSマークに付帯保険があることを知らずに加入していることが分かります。
義務化が進む自転車保険とは?

自転車保険の義務化
現在、全国の各自治体で自転車保険の加入義務化が進んでいます。
そもそも何故、自転車にも保険を付ける必要があるのでしょうか。
自転車事故というと自動車相手の事故というイメージがありますが、実は自転車同士の事故や歩行者との事故もたくさんあります。
そんな歩行者との事故で数千万円もの賠償支払い命令が出ることもあります。
特に有名なのが、平成20年9月に神戸市で起きた自転車と歩行者との衝突事故です。
当時小学5年生だった少年が歩行中の女性と自転車事故を起こし、少年の監督責任者である母親に対し、9,521万円の賠償が命じられたのです。
皆さんが乗られている通称“ママチャリ”と呼ばれるシティサイクルは、時速12~18km程度の速さで走行します。
ロードバイクだと時速20~30km程度の速度で走ると言われています。
小学生が乗る自転車であっても、歩行者と衝突した場合、当たり所が悪ければ相手が死亡することがあるのです。
自転車保険で重要なのは『相手に対する損害賠償』
自転車保険は自動車保険と違って、強制保険がありませんので、高額の損害賠償が発生した時に対応できない人がでることは容易に考えられます。
もしもあなたが自転車を走行中、歩行中の人と正面衝突して相手を半身不随にさせてしまったとしたら…
その賠償額は数千万円以上に及ぶでしょう。
この金額を果たして払えるかと言ったら、普通の人には難しいでしょう。
だからこそ全国の各自治体は、自転車事故の被害者のみならず、加害者も救済しようという意味合いを込め、相手にケガをさせた時に補償を受けられる保険に入りなさいと義務化を進めているのです。
自転車事故において最も重要なのは、相手をケガをさせた場合の『損害賠償補償』なのです。
実はTSマークの付帯保険も義務化に対応している
実はTSマークには、自転車保険に必要な損害賠償補償が青色で1,000万円、赤色で1億円の損害賠償補償ついています。
損害賠償補償のある保険に加入していれば、自転車保険の加入義務は果たしているので、TSマークの付いた自転車に乗っている人は、自転車保険の加入義務を果たしていると言えます。
そのため、これで自転車事故にあっても安心と考えている人も多く、自治体の関係者でもTSマークを勧める人がいます。
しかし、TSマークに加入していれば本当に自転車事故で加害者になった時でも安心なのでしょうか。
実はTSマークの付帯保険には大きな落とし穴があるのです。
TSマークの付帯保険には大きな落とし穴が

付帯保険で適用される事故はほとんどない


付帯保険内で補償が受けられる条件は『重い後遺障害を負った場合のみ』
腰椎の骨折や片目の失明だけでは補償はおりない…それって保険と言えるの?
付帯保険の賠償補償について、補償条件が認知されていない?
TSマークが貼付されている自転車に乗っている人(加害者)が第三者(被害者)と事故を起こして死亡させた場合、又は重度後遺障害を負わせた場合、次の保険金が支払われます。
【損害賠償保険】
TSマーク | 青色 | 赤色 |
死亡・重度障害補償 | 重度後遺障害は1~7級に限る | |
補償金額 | 一律最大1,000万円 | 一律最大:1億円 |
ここでポイントとなるのは、重度後遺障害は1~7級に限るという点です。
自転車保険の方程式が106人の方にアンケート調査を行った所、TSマークに付帯している損害賠償補償を受けるための条件をきちんと認識している人はわずか約19%でした。


※自転車比較の方程式調べ 詳しくは②TSマーク認知度実態調査参照(106人にアンケート)
約40%の人がどんなケガでも受けられると思っており、全体の68%が実際には補償が受けられない等級のケガでも受け取れると考えていることが分かりました。
では、実際に重度後遺障害7級とはどの程度のケガなのでしょうか。
一番重い後遺障害の1級と7級の身体障害内容を見てみましょう。
【障害等級表はコチラから】
障害等級 | 身体障碍 |
1級 | ①両目が失明したもの ②そしゃく及び、言語機能を廃したもの ③両上肢をひじ関節以上で失ったもの ④両上肢の用を全廃したもの ⑤両下肢をひざ関節以上で失ったもの ⑥両上肢の用を全廃したもの |
7級 | ①一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの ②両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの ②-2.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの ③神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの ④胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの ⑤一手の親指を含み三の手指又は親指以外の四の手指を失ったもの ⑥一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの ⑦一足をリスフラン関節以上で失ったもの ⑧一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ⑨一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ⑩両足の足指の全部の用を廃したもの ⑪外貌に著しい醜状を残すもの ⑫両側のこう丸を失ったもの |
引用:国土交通省 障害等級表
TSマークに付帯している損害賠償保険を適用できるのは、相手が上記の様な重度障害を負った場合のみです。
また、赤色マークに限り被害者見舞金が出ますが、被害者に15日以上の入院をする傷害を負わせた場合しか保険金がおりません。
TSマーク | 赤色 |
被害者見舞金 | 入院15日以上:(一律)10万円 |
15日以上の入院を要するケガを相手に負わせた場合に、とても10万円では損害賠償責任を果たせるとは思えません。
そう考えると、TSマークの付帯保険だけでは自転車事故に対するケガを全て補うのは難しいと言えます。
TSマークの付帯保険には対物補償が対応していない
一般的な個人賠償責任保険であれば、対人・対物の両方に補償が適用されますが、TSマークの付帯保険の場合は、誤って他人の物を壊してしまっても補償されません。
例えば、TSマークが付いている自転車に乗った子どもがエンジンを切っている自動車に突っ込んでしまった場合、TSマークの付帯保険は対物補償がないため、補償対象外。自動車の修理代は100%自己負担となり、監督責任である親に対し請求が来ることになります。
青色&赤色のTSマークに付帯する傷害保険


傷害保険はさらに適用条件が狭い
傷害保険の場合、TSマークが貼付されている自転車に乗っている人が交通事故で事故日から180日以内に入院・死亡、または重度後遺障害を負った場合、次の保険金が一律に支払われます。
【傷害保険内容】
TSマーク | 青色 | 赤色 |
入院補償 | 入院15日以上対象 | |
補償金額 | 一律:1万円 | 一律:10万円 |
死亡・重度障害補償 | 重度後遺障害は1~4級に限る | |
補償金額 | 一律:30万円 | 一律:100万円 |
【入院補償】
事故によって自分が入院した場合、補償が受け取れるのは入院を15日以上した場合のみです。
この条件と補償額についてアンケートをとったところ、知っていたと答えた人はTSマークに加入したことがある人全体の約18%でした。


※自転車比較の方程式調べ 詳しくは②TSマーク認知度実態調査概要参照(106人にアンケート)
【死亡・重度障害補償】
死亡・重度障害補償については、先ほどの損害賠償補償よりもさらに条件が厳しく、4級以上の重度後遺障害を負わないと補償が一切受けられません。
重度後遺障害の4級というのは下の内容です。
【障害等級表はコチラから】
障害等級 | 身体障碍 |
4級 | ①両眼の視力が〇・〇六以下になったもの ②そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの ③両耳の聴力を全く失ったもの ④上肢をひじ関節以上で失ったもの ⑤下肢をひざ関節以上で失ったもの ⑥両手の手指の全部の用を廃したもの ⑦両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
引用:国土交通省 障害等級表
この条件について正しく認識していた人は、TSマークに加入している人の約21%しかいませんでした。


※自転車比較の方程式調べ 詳しくは②TSマーク認知度実態調査概要参照(106人にアンケート)
以上から、TSマークに加入している人の中でも、付帯保険に対してきちんと認識している人は少ないということがわかります。
TSマークの付帯保険は自転車保険として十分ではない


付帯保険の支払い該当事故は年間どれくらい?
平成30年度におけるTSマークの交付総数は全国で約218万枚発行されています。
では実際、自転車事故を起こした場合にTSマーク付帯の保険が適用された人はどれくらいいるのでしょうか。
発生した事故 | TSマーク付帯保険 の支払い該当事故件数 |
支払い金額 (青色) |
支払い金額 (赤色) |
賠償責任事故 | 2件 | 最大1000万円 | 最大1億円 |
死亡・重度後遺障害事故 | 26件 | 30万円 | 100万円 |
傷害入院15日以上事故 | 641件 | 1万円 | 10万円 |
被害者見舞金15日以上事故 | 19件 | ー | 10万円 |
合計 | 688件 | ー |
上記表を見て分かるのは、TSマーク付帯の保険が適用されたのは688件しかありません。
ほとんどの事故で損害賠償責任を補償してくれない
自転車保険で一番重要なのは、相手をケガさせた時の損害賠償補償です。
TSマークの付帯保険では、相手(被害者)が死亡もしくは後遺障害7級以上を負う事故についてのみ補償されます。
しかし、そのような事故は年間に1、2件しか起きていません。
また相手が15日以上の入院するような事故は平成30年度では19件起きていますが、これは被害者見舞金10万円のみの補償です。
この場合、最大1000万円もしくは1億円の損害賠償補償は受けられていません。
入院15日以上の相当な事故であっても、約90%は損害賠償補償を受けられていないことが分かります。
この結果、ほとんどの自転車事故についてはTSマーク加入者の自己負担、もしくはTSマーク以外の保険を使って損害賠償を支払っていることになります。
さらに、入院15日未満の骨折や片目失明の様な事故でも補償は一切受けられません。
頻度として圧倒的に入院15日未満の事故の加害者になることが多いので、ほとんどの事故で損害賠償請求補償額は受けられないことが分かります。
これでは、自転車保険としてみた時に十分な補償範囲とは言えないですし、自治体が進めている自転車保険の義務化の意義を果たせないのではないでしょうか。
TSマークに付帯する自転車保険はあくまで“おまけ”である


pixabay:freestocks-photos
ここまでTSマークの付帯保険について見てきましたが、最初に触れた通り、TSマークは点検・整備の印です。
損害賠償保険はあくまで『おまけ』として付帯されているに過ぎません。
確かに毎年自身が乗る自転車の点検・整備することは安全のためにとても重要で、TSマーク加入はその意味で必要であると言えます。
しかし、TSマークに付帯する自転車保険だけでは、ほとんどの事故で損害賠償補償を受けることができません。
もしもの自転車事故に備えるためには、TSマーク加入の他に、補償範囲の広い自転車保険に加入することが必要と言えるのではないでしょうか。
どんな自転車事故にも対応する“自転車保険”に入ろう!!


pixabay:Rhythm_In_Life
TSマークに付帯している自転車保険。
相手が亡くなった場合などの最悪の事故への備えとしては嬉しい付帯保険ですが、これさえ入っておけば安心!というものではないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
あくまでもTSマークは、自転車を安全に乗るための点検・整備を推奨することが目的であり、自転車保険はおまけのようなもの。
ほとんどの自転車事故は補償されないことを踏まえると、自転車保険として考える場合、他の保険なしで十分であるとはとても言えません。
自転車保険を検討しているなら、もしもの事故に幅広く対応してくれる自転車保険を選ぶことをお勧めします。
【今回のランキング調査の概要はこちらでご確認できます!】
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