自然豊かな北海道で自転車に乗るのはとても気持ちがよいもの。北海道は世界各国からも注目度が高い場所でもあります。そんな北海道で自転車を利用する際、実は自転車保険の加入義務もしくは努力義務が条例としてあるのはご存知でしたか?
誰が対象でどんな条例なのか、わからないことだらけだと思います。今回はそんな自転車保険の対象者について詳しくまとめてみました。
北海道では平成30年4月1日から『自転車損害賠償保険等(略称:自転車保険)への加入』の努力義務が課さられました。
その理由の1つが、自転車利用者が加害者になってしまった交通事故が後を絶たなかったから。中には、自転車利用者側が損害賠償金を数千万円支払う事例さえも散見されています。
【自転車事故による高額賠償事故の事例】
賠償金額:9,521万円
平成25年7月4日、神戸地裁にて判決
小学5年生の男児が自転車を走行中に歩行中の62歳の女性と正面衝突をした。女性は意識が戻らない重体となってしまった。
賠償金額:9,266万円
平成20年6月5日、東京地裁にて判決
自転車で走行中の男子高校生が車道を横断しようとしたところ、24歳の男性と衝突。男性は言語機能の喪失などの後遺症が残ってしまった。
「もしもあの時、自転車保険に入っていれば…」
「こんな高額な賠償請求されても支払えないよ…」
などと、悔やむことがないように私たち自転車を利用する全ての対象者は、今一度自転車保険の在り方について見直さなければいけません。
今回は、そんな自転車保険について「誰が対象となるのか」「北海道の場合どのような条例になっているのか」など、詳しく解説していきたいと思います。

北海道が今年の4月から自転車保険への加入と全年齢のヘルメット着用を努力義務としていたことが分かったため追加しました。
自転車利用抑制の方向に行くのはやめて・・・と思ったりする(根拠もある)のですが、
自動車ドライバーは自転車に対して安全な側方間隔を保つ、などの項目も条例にあり。 https://t.co/usVu0BGDu6
— となりのじてんしゃ (@BikeNextToYou) 2018年11月5日
北海道で自転車に乗るためには
北海道で自転車を利用するためには、自転車保険の加入義務、もしくは努力義務が条例として挙げられています。誰がその義務の対象なのかを詳しくみていきましょう。
対象者 | 義務 / 努力義務 |
---|---|
自転車利用者 | △ |
保護者 | △ |
事業者 | ◯ |
貸付け業者 | ◯ |
小売業者 | △ |
※◯:義務 △:努力義務
上記表を見ると、加入義務と努力義務に分けられていることがわかります。また、ここでの加入義務と努力義務とは以下のような意味を指します。
【加入義務】
・自転車保険に加入しなくてはいけないこと
【努力義務】
・自転車保険に加入する努力が必要ということ
北海道では自転車保険の加入は事業者と貸付業者のみ

次に、対象者の意味合いについて解説していきます。
【努力義務の対象者】
●自転車利用者※1
20歳以上の成人した人のことを指します。
そのため、北海道で自転車を利用する成人した者全てが対象となるので観光客等も含まれます。
●保護者※1
20歳未満の未成年は、自ら自転車保険に加入することができません。
そのため未成年の子が自転車を利用することがある場合は、監督責任でもある保護者が自転車保険への加入に努めなければなりません。
●小売業者※2
自転車を販売する業者等のことを指します。
自転車を顧客に販売する場合は、自転車保険の必要性や情報提供に努めると共に、防犯登録や施錠等の必要性、自転車点検や整備、乗車ヘルメットの着用などの必要な情報を提供、または助言に努めなくてはいけません。
上記3つの対象は努力義務であるため「自身で率先して自転車保険の加入に努めてくださいね」と自治体が促している状態です。
【加入義務の対象者】
●事業者※3
自転車を業務の一環として従業員が使用する場合は、企業(会社側)がその事業活動に係る自転車保険に加入しなくてはいけません。
ただし、従業員が会社までの通勤手段として使用する場合は業務対象外となります。そのため、自転車保険加入の有無を確認し、未加入の場合は自転車保険に加入するよう指示や情報提供を促す努力が必要です。
●貸付け業者※3
レンタサイクル事業を行っている業者等のことを指します。
この場合、自転車のレンタルが有料・無料であっても自転車を利用者に貸し出すわけですから、貸し出す側が自転車保険に加入していなくてはいけません。
他の自治体では、自転車保険の加入義務は自転車利用者や保護者に定義していることが多いのですが、北海道の場合は事業者と貸付け業者のみが加入義務の対象となっています。(令和元年6月時点)
また、自転車を業務で使用する従業員を始め、レンタサイクルで自転車を借りる利用者には乗車用のヘルメットを着用させる必要もあります。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/dms/kat/bicycle/bicyclejigyouyou.pdfより引用
※1.第16条:自転車利用者は、自転車損害賠償保険等への加入に努めるものとする。 ただし、当該自転車利用者以外の者により、当該利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置が講じられているときは、この限りでない。
※2.第16条第2項:自転車の小売を業とする者(次条第1項及び第2項において「自転車小売業 者」という。)は、自転車を購入しようとする者(同条第1項及び第2項にお いて「自転車購入者」という。)に対し、自転車損害賠償保険等への加入の必 要性に関する啓発及び自転車損害賠償保険等に関する情報の提供に努めるもの とする。
※3.第16条第3項: 自転車の貸付けを業とする者(次条第3項において「自転車貸付業者」とい う。)その他の自転車を事業の用に供する事業者は、その事業活動に係る自転 車損害賠償保険等に加入しなければならない。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/csr/cycle/jourei.pdfより引用
自転車保険に未加入の場合は条例違反になるの?!罰則は?

北海道の条例では、自転車を利用する者に対して自転車保険への加入を務めるように規定しています。ただし、事業者や貸付け業者に関しては平成30年10月1日から加入の義務化がされています。
しかし、どちらの場合も現時点での罰則はありません。(令和元年5月末現在)
そうはいっても、もし自転車で走行中に対人事故や物損事故を起こして加害者となってしまった場合、高額な賠償金や被害者による治療費の負担がとても大きいことから、自身を守るためにも自転車保険に加入することが望ましいといえるでしょう。
私は当てはまる?具体例から確認しよう!

「なんとなく対象者は分かったけど、実際自分は当てはまるのかな?」と思った方も多いはず。
ここでは、具体例を挙げながら確認をしていきましょう。
例①
ロードバイクで日本一周の旅をしています。北海道で自転車を利用する場合、自転車保険は加入する必要があるのでしょうか。
回答 北海道内で自転車を利用する場合は、条例の適用となります。そのため、20歳を超えた成人の場合は、ご自身で自転車保険に加入に努めなくてはいけません。※1
例② 16歳の娘が4月から高校に通うため、自転車通学をすることになりました。この場合、自転車保険は誰が加入するべきなのでしょうか。
回答 娘さんは16歳とまだ未成年ですので、保護者の方が自転車保険の加入に努めなくてはいけません。※1
例③ 今まで私の会社は、バイクを使って新聞配達を行っていました。しかしこの所人手不足のため、パートさんを雇うことにしたのですが、バイクの免許を持っている方が意外と少ないことがわかりました。
そのため、自転車での配達も入れようと視野に入れようと考えているのですが、この場合雇い主側(事業者)が自転車保険に加入しなくてはいけないのでしょうか。
回答 従業員が業務の一環として自転車を利用する場合は、事業者である雇い主が自転車保険に加入しなくてはいけません。それはたとえパートやアルバイトであっても同じです。※3
ただし、通勤手段として自転車を利用する場合は、利用する個々で自転車保険の加入が必要です。
例④ 北海道の良さをもっとたくさんの人に知ってもらいたい思いから、レンタサイクルの貸付け事業を立ち上げました!この場合、自転車保険の加入義務は誰に当てはまるのでしょうか。
回答 この場合は貸付け業者であるレンタサイクルの貸し手に自転車保険の加入義務があります。これは、レンタサイクルの貸し出し料金を取るかに関わらず、同じです。※3
また、貸付け業者はお客さまに対して自転車の活用方法や安全に利用するための説明や助言を行うように努めましょう。※4
※4.第17条第3項:自転車貸付業者は、自転車を借り受けようとする者に対し、自転車の活用等 の推進に関する必要な情報の提供及び助言を行うよう努めるものとする。
例⑤ 父親の代から自転車屋を運営しています。皆さんに安心して自転車に乗ってもらいたい思いから、必ず安全運転の心構えやヘルメットの着用をご案内しています。これから、自転車保険についても合わせてご案内するべきでしょうか。
回答 自転車を販売するお店(小売業者)は、自転車を購入するお客さまに対して自転車保険への加入に関する必要性や情報を提供に努める必要があります。
また、防犯登録や施錠等の必要性、自転車点検や整備、乗車ヘルメットの着用などの必要な情報提供やご案内も努める必要があります。これは行っているようですので、今まで通りお客さまにご案内をお願いします。
■まとめ
北海道では、自転車の安全な利用を行ってもらいたい思いから乗車用のヘルメット着用や、自転車の側面に反射器材の着用の他、万が一の事故に備えて『自転車損害賠償保険等への加入』について規定されました。
特に自転車を業務で使用する事業者や貸付け業者(レンタサイクル事業者)は、平成30年10月1日から保険の加入が義務化されますので、従業員やお客さまの安全・安心を第一に考え、自転車保険に加入しましょう。
また、現時点では個人での自転車利用や自転車販売を行う小売業者は、加入の義務はありません。
しかし、万が一の事故に備えて入っていることに損はないでしょう。自分自身や家族、そしてお客さまの安心・安全を考えて、自転車保険の加入に努めるようにしましょう。
北海道の義務化対象市区町村
義務化対象となる市区町村は以下を参考にして下さい。



