東京では、今年の4月から自転車保険等への加入が義務化されます。
なぜ、いま義務化が進んでいて、対応するにはどうすればいいのでしょうか。
都民以外も対象となりますので、しっかりと確認しましょう。
目次
東京都でも自転車保険の加入義務化が決定
2019年(令和元年)9月18日、東京都議会で「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の改正が決定されました。
では、私たちはいつまでに、何をしなければならないのでしょうか?
東京都の義務化はいつから?【条例の施行日】
東京都では条例改正を受けて、2020年4月1日から23区を含む東京都全域で自転車保険の加入が義務化されます。
ただし、豊島区ではすでに2019年から自転車保険への加入が義務化されています。
豊島区を自転車で通る人はすでに義務の対象となっていますので注意が必要です。
2019年(令和元年)10月1日~
【その他23区】
2020年4月1日~
【23区外の地域】
2020年4月1日~
義務化の背景|なぜ東京で義務化?
なぜいま東京全域で自転車保険が義務化されるのでしょうか。
その理由は大きく3つあります。
- 東京では自転車事故の比率が高い
- 自転車保険加入率の低さ
- 昨今の高額賠償事例
1. 東京では自転車事故比率が急上昇している
東京では全体の交通事故数や死亡事故数は減少傾向にあります。
しかし、実は交通事故における自転車事故の割合が増加しているのです。
東京ではなんと全交通事故の4割近くで自転車が当事者となっています。
2. 東京の自転車保険加入率は低い
自転車事故比率が上昇している反面、加入率は50%程度にとどまっています。
東京の自転車保険加入率は全国で26位(2020年 au損保調べ)となっており、決して高くありません。
3. 全国で高額の賠償事例が発生している
実は、自転車が加害者となる事故でも、1億円近い支払い義務が発生することがあります。
今まで各地の自転車事故によって数千万円の高額賠償事例が発生していることもあって、自転車保険の加入義務化が決定しました。
東京都の加入義務化について、日大の轟朝幸教授にインタビューしてきました!
自転車保険とは
義務化に対応するためには、どのような保険に入れば良いのでしょうか。
実は、必ずしも「自転車保険」という名前がつくものに加入する必要はありません。
自動車保険や共済に加入している人はすでに加入義務を果たしている可能性もあります。
個人賠償責任補償と傷害補償
そもそも自転車保険とはどんな保険なのでしょうか。
自転車保険は、基本的に次の2つの保険が組み合わさった保険です。
- 「相手への損害賠償」
⇒ 個人賠償責任保険 - 「自身のケガ」の治療費
⇒ 傷害保険
加害者になった時の保険が必要
義務化に対応するには、個人賠償責任補償がついた保険に入る必要があります。
つまり、自分が加害者になったときに、相手に損害賠償できる保険に入る必要があります。
なぜ加害者になった時の保険が必要?
自転車事故で相手に障害がのこったり、死亡させてしまった場合、数千万円の賠償義務が発生することがあります。
しかし、自転車には自動車のように自賠責保険がありません。
被害者には泣き寝入りリスクが
加害者側が保険に入っていない場合、被害者がなかなか治療費などを受け取れず経済的に困窮してしまうリスクが発生します。
相手が自己破産をした場合などは、泣き寝入りしなければなりません。
- 自転車事故でも高額の賠償リスクがある
- 義務化されるのは損害賠償保険
- 被害者と加害者の両方を救済することが目的
自動車保険や共済の特約でも対応可能
実は、各種保険や共済に入っている人は、すでに自転車保険の加入義務を果たしている可能性があります。
- 自転車保険
- 自動車保険、火災保険、傷害保険の特約
- 会社の団体保険、PTA保険などの付帯保険
- 共済の特約
- TSマークの付帯保険
- クレジットカードの付帯保険
東京都の罰則は?
自転車保険に未加入だった場合、どのような罰則があるのでしょうか?
加入義務化を知らなかった場合にどうなるのかも気になりますよね。
東京でも罰則規定はない
東京都では今のところ罰則規定は設けられていません(2020年3月現在)。
その理由の一つは、保険に加入しているかどうかの確認が難しいからです。
加入義務の対象となるような補償は、自動車保険や火災保険のオプションとして加入している場合もあります。
また、自分自身で加入していなくても、親や配偶者の「家族プラン」に加入している場合もあり、加入証明をすることが非常に難しいのです。
未加入のリスクは?
自転車保険の義務化について未加入だった場合でも、直ちに違反で捕まることはありません。
ただし、保険に未加入だったことによって賠償責任を果たせない場合、刑事裁判で減刑を受けられない可能性があります。
また、未加入の状態で事故を起こしてしまった場合、民事訴訟などで、より不利になる可能性があります。
義務化を知らなかった場合は?
自転車保険の義務化について知らなかった場合でも、責任が軽くなることはありません。
東京都における義務化対象者は?
他県からの通学、通勤や旅行者も対象なのでしょうか?
自転車に乗らない都民は対象なのでしょうか。
東京を走る人が対象
自転車保険の加入義務化の対象になるかどうかは、「自転車で東京都を走行するかどうか」で決まります。
そのため、東京都在住かどうかは関係なく、他県に住んでいても自転車で東京都を走行する場合は義務の対象になります。
ただし、未成年者については保護者に、会社の業務で自転車を使う場合は事業主に加入義務があります。
- 東京都を走行する人
- 東京都を走行する子供の親
- 貸付け業者(レンタルサイクル業者)
- 事業者(業務で自転車を使う場合)
自転車利用者の加入義務
東京都で自転車に乗る人は、自分が被保険者となる「自転車損害賠償責任保険等」に加入する義務があります。
「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」には次のように書かれています。
“自転車利用者は、自転車の利用によって生じた他人の生命、身体又は財産の損害を賠償することができるよう、
当該損害を塡補するための保険又は共済(次条において「自転車損害賠償保険等」という。)への加入その他の必要な措置を講じるよう努めなければならない。”(第二十七条)
ただし、保護者や事業者、レンタル業者など、自転車を運転する人以外が保険に加入している場合は義務の対象にはなりません。
子供(未成年者)は保護者に加入義務がある
子供が自転車事故で相手をケガさせた場合、親の監督責任が問われ、多額の賠償支払い命令が出ることがあります。
未成年者は自分で保険に加入することはできないので、保護者が代わりに自転車保険に加入する義務を負います。
事業者・貸付け業者も対象
事業者(会社)と貸付け業者にも保険の加入義務があります。
【事業者】
従業員が業務の中で、東京都を自転車走行する場合は、従業員が被保険者になる賠償責任保険等に加入しなければなりません。
【貸付け業者】
レンタサイクルとして東京で自転車を貸し出す業者は、自転車に乗る人が損害を与える場合に備えた自転車保険に加入しなければなりません。
小売業者は自転車保険加入を確認する努力義務がある
自転車を販売、整備、修理するときは、購入者に対して自転車損害責任保険等の加入の有無について確認しなければなりません。
そのうえで、加入していないことが分かったら、自転車を買おうとしている人に自転車保険などの情報を提供する努力をしなければなりません。
東京都の義務化対象クイズ
次の場合、誰が義務化対象になるでしょうか?
1.千葉県在住の子供が都内の高校に自転車で通う
保護者に義務がある
東京都を自転車で走行すると義務の対象になりますが、未成年の場合はその保護者に義務が生じます。
保護者は子どもが被保険者となるような損害賠償保険等に加入しなければなりません。
2.自転車で東京の大学に通う
未成年の間は親、成人したら本人に義務がある
未成年者の場合は保護者に義務がありますが、成年者であれば自分に義務が生じます。
成年者は、学生だとしても自分が被保険者となるような損害賠償保険に加入しなければなりません。
3.都内在住の学生が千葉県の駅から千葉県の学校まで自転車を使う
誰にも加入義務はない(努力義務はある)
東京都に住んでいる人でも都内で自転車に乗らない場合は都の条例の対象外です。
千葉県では自転車保険加入は努力義務となっています。
4.業務の中で自転車を利用する
勤務している会社に加入義務がある
業務の中で自転車を利用する場合は、事業者に加入義務があるので従業員が個々に加入する必要はありません。
ただし、通勤など業務外で自転車を利用する人は義務の対象となります。
5.勤務先が渋谷区にあり、来月から健康のために自転車通勤を考えている
本人に義務がある
渋谷区は東京都にあるので、条例の対象になります。
通勤で自転車を使う場合は、本人に義務があります。
6.港区に旅行に行き、レンタサイクルを借りて走行した
貸付け業者に義務がある
東京で自転車を乗る場合、シェアサイクルに乗る旅行者も義務の対象となります。
ただし、貸付け業者に保険への加入を義務付けられているため、自転車利用者に加入義務はありません。
東京ではすでに自転車保険加入やヘルメット着用が「努力義務」
自転車保険の加入義務化は2020年4月から施行されますが、それまでは自転車保険に加入しなくてもいいのでしょうか?
実は現在(2020年1月現在)、東京ではすでに自転車保険の加入は「努力義務」となっています。
また、保険加入だけではなくヘルメット着用なども東京都全域で努力義務となっています。
豊島区では義務化が始まっている
東京都全体としては2020年4月から義務化がはじまりますが、豊島区ではすでに2019年10月から自転車保険の加入義務化されています。
対象者は豊島区を自転車で走る人なので、池袋などを自転車で通る可能性のある人は、現時点で自転車保険の加入義務化の対象となっています。
詳しくはコラム記事をご覧ください。
【罰則なし!】豊島区で自転車保険が加入義務化!賠償責任保険に加入すべき?
足立区では既に運転中のスマホ操作の禁止などが義務化されている。
また、足立区でも自転車の安全利用に関する改正条例が施行されています。
この条例では、運転中のスマホ操作禁止やイヤホン禁止などの義務などが規定されています。
足立区では、自転車保険の加入義務以外にも、東京都よりも自転車の安全運転のための義務が東京都より細かく定められているので注意しましょう。
なお、自転車保険の加入については東京都と同じ2020年4月1日から義務化されます。
【足立区を走行する場合の義務/努力義務】
義務 | |
自転車保険加入 | 〇 |
鍵の取り付け、 施錠 |
〇 |
防犯登録 | 〇 |
傘さし運転をしない | 〇 |
スマホ運転 | 〇 |
イヤホンで音楽 などを聴かない |
〇 |
歩行者が多い ところでの徐行など |
△ |
自転車の適切廃棄 | △ |
ひったくり防止カバー | △ |
ヘルメット着用 | △ |
自転車の定期点検・整備 | △ |
※◯:義務 △:努力義務
危険運転の罰則
傘差し運転や、スマホをしながらの運転などの危険運転には罰金もあります。
見つかった場合は、5万円以下の罰金が科されることがあります。
詳しくは足立区の義務化コラムに掲載していますので、そちらをご覧ください。
【足立区/自転車保険の加入義務化】注意点や罰則は?2020年に条例施行
東京の義務化に備えて家族で保険を選ぼう
今回は、東京都の自転車保険への加入義務化について解説しました。
東京都で2020年4月1日から義務付けられる自転車保険への加入は、自分が被害者になった時、あるいは加害者になった時にも、あなたと家族を守ってくれるはずです。
自転車保険は、本人タイプ、家族タイプ、本人・親族タイプなど各家庭の利用者の数に合わせて最適なプランがあります。
自転車を利用するのは誰か、自身ののケガの補償が必要かなど、各家庭の事情によって最適な保険プランは異なります。
まずは自転車保険に入っていないか家族で確認
自動車保険の特約などで新しい自転車保険が必要のない人も多いはずです。
これを機会に、自分たちが入っている保険を見直して、家族に最適な保険を見つけてください。

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東京都の義務化対象市区町村
義務化対象となる市区町村は以下を参考にして下さい。
2019年10月から豊島区は加入義務、そのほかの市区町村は2020年3月31日までは加入努力義務、2020年4月1日からは加入義務です。