平成27年4月1日、熊本県で「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が施行されました。同年6月には、一定の交通違反を繰り返した自転車運転者へ講習の受講が義務付けられるなど、自転車の安全運転が見直されるに至っています。
そこで今回は、どのような人が義務の対象なるのか、熊本県の条例に関して詳しく解説していきます。
平成27年4月1日に施行された「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」は、自転車が加害者となった交通事故での高額な賠償に備えることなどが盛り込まれた条例です。
県はこの条例について周知してはいるものの、内容を理解しているまだまだ人は少なく、広く浸透しているとはいい難い状況です。
ここからは、この条例の内容を詳しく紹介しいていくとともに、どのような人に自転車損害賠償保険等への加入の義務があるのかなど、解説していきたいと思います。
熊本県在住の人はもちろん、近隣に住む通勤・通学で自転車を使用している人もぜひご覧ください。
熊本県では努力義務!自転車保険の加入義務化
「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では、自転車の利用者に対して自転車事故の高額な賠償に備えるよう促す旨が記されています。
他県に目を向けると、保護者や貸付業者にも加入義務や加入努力義務(加入に努めなければいけない)を課していますが、現状熊本県では自転車利用者と事業者、小売業者に努力義務が課されるに留まっています。
その努力義務ですが、基本的には「自転車で熊本県を走行する」かどうかで、加入対象となるか決まります。
つまり、住んでいる場所は関係なく、県外在住であっても熊本県内で自転車に乗る場合、自転車保険等への加入が求められるのです。
具体的に、努力義務の対象となるのは、以下の人たちです。
・自転車利用者(未成年者及び業務のために自転車を利用する者を除く)
・事業者
・自転車小売業者
※表は横にスクロールできます。
対象者 | 義務 / 努力義務 |
---|---|
自転車利用者 | △ |
保護者 | ー |
事業者 | △ |
貸付け業者 | ー |
小売業者 | △ |
※◯:義務 △:努力義務
条例の内容をチェックしましょう!
自転車利用者の保険加入努力義務について
自転車の利用者は、自分自身を被保険者として自転車損害賠償保険等への加入努力義務が求められます。
ただし、保護者や事業者、レンタル業者など、場合によって自分以外が加入している場合は、努力義務の対象にはなりません。
以下に該当する条例の内容を抜粋したので、ご確認ください。
第5条第4項
自転車利用者は、自転車の利用によって他人の生命、身体又は財産を害したときはこれにより生じた損害を賠償する責めに任ぜられることがあることを認識するとともに、当該損害を賠償する責任が発生したときにこれによる自転車利用者の損害を保険会社等が塡補することを約する契約(以下「自転車損害賠償保険等」という。)の締結その他の必要な措置を講じるよう努めるものとする。
事業者には加入努力義務がある
個人で利用する場合と同様、事業者にも自転車保険への加入が求められます。
業務で自転車を利用する場合は、従業員が被保険者となるよう、事業主が賠償責任保険などに加入する努力義務を負います。
その理由として、仮に個人で自転車保険に加入していたとしても、保険によっては勤務中の事故が補償対象外となる場合があるためです。
第8条第2項
事業者は、その従業員に対し、自転車損害賠償保険等への加入の必要性に関する啓発及び自転車損害賠償保険等に関する情報の提供に努めるものとする。
小売業者も加入努力義務
小売業者は、条例における努力義務の対象となっているため、未加入でも違反ではありません。
ただし、自転車を購入しようとしている人に対して、自転車保険への加入の有無などを確認し、加入していない人には、自転車保険などの情報を提供することが努めるよう求められています。
第9条第2項
自転車小売業者は、自転車の購入者に対し、自転車損害賠償保険等への加入の必要性に関する啓発及び自転車損害賠償保険等に関する情報の提供に努めるものとする。
未加入の場合はどうなる?違反したら罰則はあるの?

自転車保険への加入努力義務ということですが、もし加入していなかった場合の罰則はあるのでしょうか?
中には、自転車保険への加入努力義務について何も知らず、この記事を見て慌てている人もいるかもしれません。
しかし、2019年5月末現在、熊本県では違反した際の罰則は設けられていません。
それでなくとも、熊本県ではあくまで「努力義務」として自転車保険への加入を促しているにすぎません。現状では、違反しても刑罰や過料等の法的制裁を受けることはないのです。
それはなぜでしょうか?
最大の理由は、加入努力義務の対象となっている損害賠償に対する補償は、自動車保険や火災保険のオプションにも含まれており、「保険に加入しているかどうかの確認が難しい」からです。
これは、義務・努力義務に関わらず、自分以外の親や配偶者が「家族プラン」に加入している場合もあることから、それぞれの保険加入を証明することは非常に困難なのです。
しかし、保険は、万が一の事態に備えて加入するものです。
罰則がないからといって加入しなくていいという訳ではありません。高額な賠償金や被害者の治療費を支払うことになった場合を想定して、自転車保険には加入しておくことをおすすめします。
義務の対象になるか具体例で確認!

ここまで、熊本県の自転車損害賠償保険等への加入の義務対象者や補償の内容について解説してきました。
続いて、「こんな場合はどうすればいいの?」という疑問に答えるため、具体例を用いてもう少し詳しく紹介していきます。
業務で自転車を利用する
結論:勤務している会社に自転車保険等への加入に対する努力義務が課される
業務の中で自転車を利用する場合、条例の対象となるのは事業者側になります。
そのため、業務で自転車を利用する場合に限り、従業員が個々に加入する必要はありません。ただし、通勤など業務以外で自転車を利用する場合は、自分が自転車保険に加入することが求められます。
勤務先が熊本市にあり、来月から健康のために自転車通勤を考えている
結論:本人に自転車保険等への加入に対する努力義務が課される
熊本市は熊本県にあるので条例の対象となり、努力義務が課されます。
まとめ
今回は、平成27年4月1日に施行された「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」について解説しました。
この条例の内容を確認してみると、施行された時期が比較的早いためか、熊本県の自転車損害賠償保険等への加入に対する内容は、他自治体と比較して踏み込んでいなように見受けられます。
その理由としては、対象者に課されるのは加入努力義務に留まっており、対象者に関しても保護者、貸付業者などには触れられていません。
しかしながら、加入義務がないから加入しなくても大丈夫ということではありません。
万が一事故を起こしてしまった際に備えて、自転車保険等に加入することが望ましいでしょう。
熊本県の義務化対象市区町村
義務化対象となる市区町村は以下を参考にして下さい。
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