茨城県では、令和元年6月27日に「茨城県交通安全条例」が改正されました。
これにより、茨城県全域で「自転車損害賠償責任保険等」への加入が「努力義務」となりました。
努力義務とは一体どういうことでしょうか。また、誰が対象でどんな保険に入る必要があるのでしょうか。
茨城県では努力義務!自転車保険の加入義務化
「努力義務」とは、積極的に努力することが義務づけられるものの、法的拘束力や罰則がないもののことです。
この努力義務の対象者は、「茨城県民かどうか」で決まります。
つまり、茨城県民ではない人は努力義務の対象からは外れることになります。
しかし、当サイトが「県民生活環境部生活文化課安全なまちづくり推進室」に確認したところ、県民以外でも県内を通行する利用者には自転車保険等への加入が求められるそうです。
努力義務の対象者は以下のようになります。
- 県民(自転車利用者)
-
保護者(8条4項)
- 事業者(4条2項)
- 貸付業者(4条2項)
- 小売業者(4条3項)
なお、自分で自転車保険に加入していなくても、家族や事業者など他の人により自分が被保険者になっていれば、努力義務を果たしていることになります。
義務の内容の確認
それでは、加入義務の対象者と、義務の内容について具体的に見ていきましょう。
県民は加入努力義務
茨城県民は、自転車を利用する場合、自分が被保険者となる自転車損害賠償責任保険等に加入する努力義務があります。
自転車利用者の加入努力義務について、条例には次のように書かれています。
第3条第4項
県民は,自転車を利用する場合にあっては,自転車の運行によって生じた他人の生命又は身体の損害を賠償することができる保険又は共済(以下「自転車損害賠償責任保険等」という。)への加入に努めなければならない。
茨城県交通安全条例より引用
高校生以下の保護者の加入努力義務
高校生以下の子供を持つ保護者は、子供を被保険者とする自転車損害賠償責任保険等に加入する努力義務があります。
第8条第4項
生徒等の保護者は,その監護する生徒等に対し歩行者の安全の確保その他の交通事故の防止及び自転車の安全な利用について必要な指導を行うとともに,当該生徒等が自転車を利用する場合にあっては,その運行について自転車損害賠償責任保険等への加入に努めなければならない。
事業者(レンタル業者も含む)の加入努力義務
業務で自転車を利用する企業や自転車をレンタルする企業は、従業員や利用者が被保険者となる賠償責任保険などへの加入努力が求められます。
仮に従業員が個人で自転車保険に加入している場合でも、勤務中の事故が補償対象外となる場合もあります。
その場合は、事業者側の対応が必要となります。
また、従業員に自転車保険の情報を提供し、加入を促進する努力義務があります。
第4条第2項
事業者は,その事業の用に供する自転車(自転車の貸付を業とする場合にあっては,その貸付に係る自転車を含む。)の運行について,自転車損害賠償責任保険等への加入に努めなければならない。
第4条第3項
事業者は,次の各号に掲げる場合には,当該各号に定める者に対し,自転車損害賠償責任保険等への加入を促進するための啓発を行い,かつ,自転車損害賠償責任保険等に関する情報の提供に努めなければならない。
(1) 従業員が通常の通勤の方法として自転車を利用する場合 当該従業員
小売業者は加入を勧める努力義務
自転車の小売業者は、自転車を購入する人が自転車保険等へ加入していることが確認できない場合は、自転車保険等の情報を提供する努力義務があります。
第4条第3項
事業者は,次の各号に掲げる場合には,当該各号に定める者に対し,自転車損害賠償責任保険等への加入を促進するための啓発を行い,かつ,自転車損害賠償責任保険等に関する情報の提供に努めなければならない。
(2) 自転車の小売を業とする場合 当該自転車の購入者
【注意】笠間市では加入義務
茨城県全体では自転車保険への加入は「努力義務」とされていますが、笠間市とつくば市は独自に自転車保険等への加入に関する条例を定めています。
特に笠間市では「加入義務」になっているため、笠間市に住む方や、笠間市へ通勤、通学する方は注意が必要です。
笠間市についてはこちらをご覧ください。
笠間|10月から自転車保険の加入義務化!未加入の場合の罰則は?
未加入だとどうなる?違反したら罰則はあるの?
自転車保険等への加入義務がある自治体で保険に未加入だった場合にはどんな罰則があるのでしょうか。
実は、現時点では罰則は設けられていません。(2020年3月現在)
その主な理由は、保険に加入しているかどうかの確認が難しいからです。
「自転車保険」という名前が付いている保険以外にも、自動車保険や火災保険のオプションなど、自転車保険の加入義務を果たすことができる特約等があります。
また、自分自身で保険に加入していなくても、親や配偶者が「家族プラン」に加入している場合もあるため、一人一人の加入の有無を確認することは困難です。
罰則はなくてもリスクがある?
しかし、罰則がないからといって自転車保険に加入しなくても良いという訳ではありません。
自転車保険への加入が義務化または努力義務化されているにも関わらず、条例に違反した状態で事故を起こした場合は、裁判等で不利になる可能性もあります。
さらに、自分に過失があると認められた場合は高額な賠償金の支払いを命じられる場合もあります。
自転車保険は車などと比べて保険料が格安
最近ではさまざまな自転車保険が販売されており、損害賠償責任補償のみであれば月々100円から加入できる自転車保険も存在します。
自転車を利用している方は、お住まいの自治体で自転車保険の加入が義務化されているかどうかに関わらず、自転車保険に加入しておくことをおすすめします。
義務化の対象になるかどうかをクイズで確認
ここまでの説明でしっかり理解できたかどうかクイズでチェックしてみましょう。
次の場合、どのような人が義務化の対象になるでしょうか。
茨城県に在住していないが、来年度から子供が茨城県の高校に自転車で通う
茨城県在住ではないため、厳密には加入努力義務の対象から外れる
しかし、万が一の事故に備えるために県民ではない場合も当局により自転車保険等へ加入努力が求められます。 高校性の多くは未成年者なので、自ら保険に加入することができません。そのため、未成年者の場合は保護者に加入努力義務があると考えられます。
自転車で茨城県内の大学に通う
茨城県在住である場合は、加入努力義務を負う
茨城県在住ではない場合も、前述のケースと同様に自転車保険等への加入努力義務が求められます。
業務の中で自転車を利用する
業務で利用する場合は、事業者(会社)側が自転車保険等への加入努力義務を負う
自転車をレンタルしてサイクリングをする
レンタル事業者側が自転車保険等への加入努力義務を負う
レンタル事業者側が自転車保険等への加入努力義務を負っていますが、必ずしも加入しているとは限らないので、その事業者が保険へ加入しているか確認した上で、必要に応じて自身での加入も検討しましょう。
リスクに備えて自転車保険に加入しよう
今回は、令和元年(2019年)6月27日に改正された「茨城県交通安全条例」によって努力義務化された「自転車損害賠償責任保険等への加入」の詳細と、その対象者について解説しました。
その背景にあるのは、自転車事故によって高額な損害賠償の支払いを命じられるケースが増えているという事実です。
多くの地方自治体で自転車保険の加入義務化の動きがあり、この度、茨城県でも自転車利用者に対する加入が努力義務化されることになりました。
現時点では未加入の場合であっても罰則は設けられていませんが、加入努力義務の対象になっている場合は、自分が被害者になった時、あるいは加害者になった時を想定して必ず加入しておくことが大切です。
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