2019年4月1日、高知県では「高知県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が施行されました。
この条例によって、自転車保険等への加入が努力義務化されています。
「どのような人が義務の対象になっているのか」
「未加入の場合は罰則が設けられているのか」など、
気になるポイントをチェックしましょう。
高知県では努力義務!自転車保険の加入義務化
高知県が2019年4月1日に施行した「高知県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では、自転車損害賠償保険等への加入が努力義務とされています。
努力義務の対象者は、基本的には「自転車で高知県を走行するか」で決まります。
・高知県に住んでいなくても、自転車で高知県を走行すれば対象
自身で加入していなくても、他の家族が加入している場合、自分も補償対象となっている場合があります。
以下の資料に努力義務の対象者をまとめたので、参考にしてくださいね!
- 県民(自転車利用者)
-
保護者(14条2項)
- 事業者(14条3項)
- 貸付業者(14条3項)
- 小売業者(15条)
努力義務の対象者
それでは、誰に、どんな努力義務があるのか見てみましょう。
自転車利用者は加入努力義務
自転車に乗る人は、自分が被保険者となる自転車損害賠償保険等に加入する努力義務があります。
第14条第1項
自転車利用者は、自転車損害賠償保険等(自転車の利用に係る事故により生じた他人の生命又は身体の損害を填補するための保険又は共済をいう。以下同じ。)に加入するよう努めなければならない。
保護者は加入努力義務
自転車利用者が未成年の場合は、その保護者に未成年者を被保険者とする自転車損害賠償保険等に加入する努力義務があります。
2015年、高知では自転車を運転する高校生が警察官に衝突するという痛ましい自転車事故が発生しました。
この自転車事故を巡り、高知地裁は高校生に約9,400万円の賠償命令を出しました。
自転車事故というと、自身や家族が“被害者”になった場合を想定する人が多いかもしれません。
しかし、自身や家族が“加害者”になる可能性もあります。そうした万が一の状況に備え、未成年者の保護者は自転車損害賠償保険等に加入しておく必要があります。
第14条第2項
保護者は、その保護する児童等が自転車を利用するときは、当該児童等の自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等に加入するよう努めなければならない。
事業者の加入努力義務
業務で自転車を利用する企業の事業者や、自転車を貸し付ける企業は、従業員や利用者が被保険者となる賠償責任保険などへの加入努力が求められます。
仮に従業員が個人で自転車保険に加入していても、保険によっては勤務中の事故が補償対象外となるので、こうした対応が必要になります。
第14条第3項
自転車貸付業者又は自転車を事業の用に供する事業者は、その事業活動に係る自転車損害賠償保険等に加入するよう努めなければならない。
小売業者は加入を勧める努力義務
小売業者は自転車を購入する人が自転車保険等へ加入していることが確認できない場合、自転車保険等の情報を提供する努力義務があります。
第15条第1項
自転車小売業者は、自転車を販売するときは、当該自転車を購入した者に対し、自転車損害賠償保険等への加入に関する情報を提供するよう努めるものとする。ただし、当該自転車を購入した者が自転車損害賠償保険等に加入していることを確認することができた場合は、この限りでない。
未加入時の罰則は?
ここ罰則について気になった人もいるのではないでしょうか?
なかには、今日まで加入努力義務の対象になっていることに気付かず、この記事を読んで焦っている人もいるかもしれません…。
自転車保険加入の努力義務について、今のところ未加入であっても罰則は設けられていません(2020年2月現在)。
その主な理由は、保険に加入しているかどうかの確認が難しいからです。
加入義務の対象となるような補償は、自動車保険や火災保険のオプションとして加入している場合があります。
また、自分自身で加入していなくても親や配偶者が「家族プラン」に加入している場合もあるので、それぞれの保険加入を証明することは非常に困難なのです。
なお、これは高知県に限らず、すでに義務化や努力義務化されている府県についても同様に罰則規定は設けられていません。
このように、自転車保険の加入義務や加入努力義務を違反しても罰則はありませんが、だからといって加入しなくていいという訳ではないのです。
未加入の状態で事故を起こすと、こんなリスクが!
自転車保険の加入義務や加入努力義務に罰則はないと説明しましたが、未加入の状態で自転車事故を起こしてしまったとしたら、大きく2つのリスクを負うことになります…。
その1つ目は、裁判等で不利になるリスクです。実は、保険への加入が義務化または努力義務化されているにも関わらず、条例を違反した状態で事故にあった場合、裁判等で不利になる可能性があります。
2つ目は、高額な賠償金や被害者の治療費を自腹で支払わなければならないリスクです。過去に高知で起こった自転車事故のように、近年の自転車事故では1億円近い賠償金の支払いを命じられるケースもあります。
このように裁判等で不利にならないために、そして万が一の高額な賠償金や被害者の治療費をまかなうためにも、自転車保険には加入しておくべきでしょう。
自転車保険は車などと比べて保険料が格安
最近はさまざまな会社が提供している自転車保険。自身のケガの補償を重視しないのであれば、月々100円から損害賠償補償の付いた自転車保険に加入できます。ほとんどの自転車保険は自転車事故だけでなく日常の事故の補償もしてくれるので、とくに義務化や努力義務化がスタートしている地域の人は早めに加入を検討しましょう!
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義務化の対象になるかどうかを具体例で確認!
ここまでの説明でしっかり理解できたかどうかクイズでチェックしてみましょう。
次の場合、どのような人が義務化の対象になるでしょうか。
高知県に在住していないが、来年度から子どもが高知県の高校に自転車で通う
保護者が自転車保険に加入するように努める必要がある
多くの高校性は未成年者なので、自ら保険に加入することはできません。そのため、子どもの代わりにその保護者が自転車損害賠償保険等に加入するように努めなければなりません。
自転車で高知県内の大学に通う
年齢によって加入努力義務の対象が異なる
未成年者の場合は、先ほどの事例と同様の理由で保護者に加入努力義務があると考えられます。一方、成年者の場合は自転車利用者に該当するため、自ら自転車損害賠償保険等に加入する努力義務があります。
業務の中で自転車を利用する
事業者に加入努力義務がある
業務で自転車を利用する場合、事業者(会社)側が自転車損害賠償保険等への加入の努力義務を負います。
自転車をレンタルして、竜串海域公園(高知県)へサイクリングをする
貸付業者に加入努力義務がある
レンタル自転車を利用する場合、貸付業者に加入努力義務があります。しかし、必ずしも加入しているとは限らないので、その業者が保険に加入しているか確認したうえで必要に応じて自身での加入も検討しましょう。
もしもの時に備えて自転車保険に加入しよう
平成31年(2019年)4月1日に施行された「高知県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」について解説しました。
自転車事故の高額な損害賠償が発生していることから、高知県では自転車利用者に対する保険加入が努力義務化されることとなりました。
高知県では過去に未成年者が重大な自転車事故を起こし、高額な損害賠償を命じられたことも記憶に新しいと思います。
今のところ未加入であっても罰則は設けられていませんが、万が一の高額な賠償金や被害者の治療費をまかなうためにも、最低限の保険には必ず加入しておきましょう。


